
川崎貯蓄銀行大阪支店(現 堺筋倶楽部)
竣工:昭和6年(1931)
設計:矢部又吉
関東の小財閥であった東京川崎財閥の銀行支店建築。
設計者は帝政末期のベルリンで建築を学んだ矢部又吉。こってりとしたバロック-新古典主義の様式装飾は
カイザー・パラスト(ストラスブール 1889)、
フリードリヒ皇帝美術館(ベルリン 1904)、
ベルリン大聖堂(ベルリン 1905)といったヴィルヘルムⅡ世時代のプロイセンの記念碑的建築と共通する。ゼツェッシオンやアール・デコ、モダニズムといった混じり物の無い、純粋な歴史的様式建築は日本の大正-昭和初期の近代建築では意外に珍しい。
現在は創作風のイタリア・フランス料理レストラン、堺筋倶楽部となっている。

上海・バンド建築ばりの凄いエントランス。

銀行らしい厳重な格子のサッシ。

同上。アカンサスの葉が新古典主義的。

営業室吹き抜け。
この建築の魅力は何と言ってもコテコテの歴史的様式装飾である。これこそ今日の欧米都市の街並みにおける主流をなす建築スタイルで、大阪旧市街たる船場の銀行/レストラン建築としてふさわしい。

同上。

同上。

一階金庫室。

見事な金庫扉のメカニズム。

金庫室は壁が厚いのでワインセラーにうってつけという訳である。

階段。規模は決して小さくないにもかかわらず、エレベータは当初から無い。
大阪都心にしては意匠面のみならず、設備面でも保守的なビルだったのかもしれない。

同上。

窓開閉のためのジャッキ挿入口。

各階に金庫(書庫?)がある。

電話交換室。電報電話が情報伝達の主流であった時代の建物である。

戸上部。

電線収納チューブ。

真鍮製窓ノブ。
この窓ガラスは代替品は生産されていない。

役員室。
残念ながら内部は改装されているとのこと。

三階集会室。広く、オフィスビルとしては非効率的な間取りである。
しかし圧倒的に美しい。

同上。

オリエンタルな家具は
オーナーの趣味とのこと。

ブルボン家紋章のある、素晴らしいバロック様式の家具。
貴族の特注品であろう。

広東時計風のクロック。

正統的ではない、凝った創作風の料理は好みが分かれる。
ワインの取り合わせやサーヴィスは優れている。

上階より営業室吹き抜けを望む。

同上。

同上。

イカす一階床モザイク。

ごちそうさまでした。