
竣工年:不詳
設計:不詳
道頓堀のはり重といえば大阪では大抵の人間が知っている高級和牛の専門店。しかし道頓堀の本店よりも心斎橋近くにある大宝寺店のほうが建物に風格がある。日本庭園や池もあって料金も本店より二割ほど高いようだ。このあたりは空襲で壊滅しているのでこの数奇屋建築は奇跡的に残ったか、あるいは戦後すぐの再建になるものだろう。
経済設計の現代ビルは古くなると醜く汚らしいだけだが、伝統的な木造建築はこのように威厳が増し都市景観を引き締める。しかし現在の建築基準法では都心においてこうした本格的な木造建築は建てることはできない。火災防止が目的なのだろうが木造建築が多く残る京都市の火災発生件数は全国的にみて少なく、杓子定規な法規制に意味があるのかはなはだ疑問と言わざるを得ない。

入母屋屋根に降り棟(くだりむね)を欠き、屋根を軽くみせるのは京都風。細部をみると大阪の建築は京都の強い影響下にあることが判る。
<降り棟>

大棟に垂直に走る2本の棟が降り棟。(大阪・船場)