大阪市立工芸学校 (現 大阪市立工芸高等学校)
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竣工年:大正13年(1924)
設計:大阪市営繕課(矢木英夫か?)
日本では極めて希少なユーゲント・シュティールの近代建築。
ユーゲント・シュティール(青年様式)は19世紀末から20世紀初頭のドイツで流行した建築スタイルで、ベルギー=フランスにおけるアール・ヌーボーの曲線美とヴィーン・ゼツェッシオン(分離派)の幾何学的な直線美が融合している。
大阪市立工芸学校ではアンリ・ヴァン・デ・ヴェルデのヴァイマル大公立美術工芸学校(1904-1911 ドイツ・ワイマール工芸学校、後のバウハウス)を模したとあるが、完全なコピーには見えない。
ヴァン・デ・ヴェルデはアール・ヌーボーからグロピウスのモダニズムへの流れを生み出した人物であって、ヴァイマル大公立美術工芸学校でも広い開口部や凹凸や装飾を排したファサード等に、後のモダニズムの萌芽が強く現れている。しかし大阪市立工芸学校ではより装飾性に富んでおり、設計者は他のドイツで建てられた他の多くのユーゲント・シュティールの建築(ex. U-Bahnhof Mundsburg 1912)も同時に参考にしていたと見るのが自然だろう。
<美章園>
この工芸高校周辺の美章園地区は戦前、スピード狂で伝説的な阪和電気鉄道が走る郊外高級住宅街であった。現在も阪神間や北摂、帝塚山、浜寺など旧い関西の住宅街でよくある数寄屋建築の豪邸や瀟洒な阪和電気鉄道美章園駅舎が残っている。
恐らく竣工当時は上の写真にあるような伝統的な船板塀だったのだろうが、ブロック塀に替えられているのが惜しまれる。
恐らくこのタイプのコンクリート塀は竣工当時のオリジナルである。