
大阪中央郵便局
竣工年:昭和14年(1939)
設計:吉田鉄郎
日本における近代モダニズム建築の代表作。
同じく吉田鉄朗設計の東京中央郵便局ではドイツ表現主義のブルーノ・タウトが賞賛したことからも判るが、コーナー部分の曲線美にドイツ表現主義の残滓が見られた。しかし8年後の大阪中央郵便局では表現主義の要素は払拭され、
ドイツ・バウハウスが追求した直線的で一切の装飾を断ち切ったモダニズムの精神が体現化されている。
また大阪中央郵便局における柱と梁が壁から露出したファサードは日本建築における真壁のオマージュに他ならない。吉田鉄朗は日本建築の簡素さに傾倒し、すでに旧馬場邸(1928)で完璧な日本建築を設計していた。(近代当時は伝統的な日本建築は大工棟梁が設計と施工を一括して行っており、建築家が設計に参画することが稀)
大阪中央郵便局はドイツのモダニズム建築と日本建築の美の結晶である。

真壁の例(大阪・船場)
柱や梁が漆喰壁から露出している。

日本建築の真壁同様、柱や梁が壁から張り出し、かつ壁は窓ガラスのみとなっている。
これは石や煉瓦の壁で建築を支える組積構造を模した西洋歴史様式建築の時代が終わり、梁と壁で建築を支える日本建築のラーメン構造がRC造技術によって復僻したことを示している。
もはや壁に強度は全然いらないのである。

右後方に建造中の大阪駅ビルの躯体が梁と壁で建築を支えるラーメン構造を示す。しかしこの駅ビルは大阪中央郵便局とは異なり出来の悪いポストモダンのカーテンウォールで覆われるらしい。

内部。天井は窓の最上部よりも低く、暖房費をケチるために、後から石膏ボードを釣って竣工時よりも下げていることが判る。
ボードを取り払えばさらに壮麗な空間になるのだろうが・・・・

左右の豪華な黒御影石の列柱は恐らくオリジナル。

カウンター。

下のハンドルを回して窓を開閉している。

ハンドルのアップ。現代建築では有り得ない分厚い黒御影石の張りにも注目。

美しい窓。

同上。

同上。

人の背丈に対する天井の高さに注目。タイルも渋い。

外観。

同上。

同上。
<参考>

東京中央郵便局(1931)。コーナー部分の曲線美に
ドイツ表現主義の残滓が見られる。
<2024年8月現在>

2012年再開発により取り壊し後、跡地に2024年竣工した高層ビル内にファサードと内装の一部が移築されている。

ビルの外観。

一階内装復元部分。
天井の石膏ボードを取り払うとこの様な意匠であったことが判る。

かつて非公開であった二階内装部分。
人の背丈と比較して巨大な窓と空間が斬新だったのだろう。
もったいない。

北側ファサード。
取り壊し前は戦後の低レベルな改装によって垢抜けない役所然としていたが、天井を元通りの高さに戻して綺麗にすると他に類例のない壮麗な近代建築であったことが判る。残念。