鮨萬本店
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竣工年:明治初期
設計施工:不詳
小鯛雀鮨で有名な承応2年(1653)創業の老舗押し寿司店。天明元年(1781)に小鯛雀鮨を仙洞御所(上皇の御所)に献上して以降、皇室より禁裏御用御鮨師、御膳所御用御包丁人の称号を賜っている。近松門左衛門の戯曲にも登場するという。
大阪は明石鯛の獲れる瀬戸内海に近く、鯛料理の名店が多い。
本店は規模の大きな表屋造りの町家である。今日大阪都心に現存する町家は浅瓦、格子窓のものが多い。しかし本件は近世後期、大阪町家のディティールとして主流だった本瓦葺き、虫籠窓という古風な造作になっており珍しい。
現在も本店内にあるへっついさん(カマド)で寿司飯が炊かれている。多分大阪都心では現役最後のへっついさんではないだろうか。
ちなみにこの鮨萬の様な京阪の伝統的な押し寿司店はお持ち帰り専用なので、店内で食事はできない。
<筋違橋>
すし萬本店軒下には旧西横堀川にあった筋違橋の橋柱がある。筋違橋の名前の由来は高麗橋筋の延長線上に江戸堀があったため西横堀川の西岸へ橋をかける際、斜めに架橋したことによる。江戸堀も西横堀川も高度成長期の乱開発で埋め立てられてしまい、不要になった筋違橋橋柱が筋違橋向かいの鮨萬に保存された。
表屋造りなので、店舗棟後方に住居棟が見える。